●なぜ、日本にやってくることになったか?
のちにボクの上司になるじゅうたん輸入販売会社の社長が、右腕となる人材を探していたわけ。それも同郷のパキスタン人をね。
それでボクの知り合いの知り合いに相談していて、ボクのところに話が回ってきたわけ。
そのころボクはパキスタンのカラチで失恋していたのね。
婚約者がボクから逃げて、別の男と結婚しちゃったんだ。それでパキスタンから逃げ出したくなって、その話に乗っちゃったわけ。
ところ社長は、パキスタンからやってきたボクに、なんと営業をやらせたのよ。いきなり日本にやってきて、日本語が話せるわけがない。絨毯を売ろうとしている先は、個人じゃなくて法人。だから数千万、数億円という商談だから、まともに日本語を話せないボクが売り込めるわけがないじゃない。
社長にエラク怒られてね~~~。
「月給ドロボー!」とか怒鳴られた。
ボクは男のくせにトイレに逃げ込んで、しくしく泣いたよ。
でも、そのときの体験がボクを強くしてくれんたんだと思う。
●トンチンカンな日本語を使っていた
じゅうたん会社には、ほかに日本人女性が4人いた。
その子たちとの会話から少しずつ言葉を覚えていったから、「女言葉」を覚えちゃったのね。8「ワタシはね~~」とか、
「行くわよ~~」とか。
それでずいぶん、笑われたりもした。
言葉に関しては面白い話もあるよ。
新橋駅の近くにパキスタン銀行があって、そこの支店長がやはりパキスタン人だった。
あるとき、その支店長のまだ1~2歳の男の子の割礼を頼まれたことがあった。
お医者さんに連れていったんだけど、話を聞くと、割礼手術は保険が利かないらしいのね。
もし手術してそこから菌が入って病気にでもなったら保険が効くとか、ろういうことを初めて知った。
それはいいんだけど、そのことがあったあと。
埼玉県川越市に知り合いのパキスタン人がいて、その人、髪の毛がだんだん無くなって、とうとうハゲちゃったわけ。それで皮膚科の病院だったかな、いや、植毛……たぶんカツラ屋さんだろうね。そこへ連れていってわげたわけ。
そして彼にカツラをつけさせてあげようと、相手に頼んだわけ。
ところが「カツラ」と「割礼」を間違えちゃってね。
「この人に、割礼してやってください」って言っちゃったのよ。
相手はビックリしてね(そりゃそうだ)。
「この大人の人がですか」と驚きつつ。
「いえ、ウチじゃ割礼はできません」って言うわけ。そりゃそうだよね。
●自らの足で世の中のニーズを探る
パキスタンから来日して、中古車販売の㈱バトファを設立、成功を収めている佐々木カマルさんは、それまで数々の商売に手を出しては失敗しています。絨毯の輸入販売をやっていたときはパートナーだった社長が夜逃げ。借金2000万円を肩代わりするなど苦労を重ねます。
カマルさんは証言します。
「数々の失敗を分析してようやくここまでたどりつけました。それまでの失敗を活かしたわけです。知り合いで同じように失敗を繰り返して数億円もの借金を抱えている男がいます。彼はこの間も、赤ちゃんの名前を額入れプレートにして売り出すという商売を始めようとしました。そして100万円の借金を申し込んできました。外国で、その商品を見かけて『これは売れる!』と確信して、サンプル商品を作ったのです。しかし、販売ルートをまたく開拓しておらず、ベビー用品を扱う企業や産婦人科にも売り込みますが、ことごとく失敗。マーケティングや販売ルートを調べるという商売の基本を怠っていたのです」
その人物は、いわば机上だけで商売のことを考えていたわけです。カマルさんは、その失敗を横目に、自らの足でさまざまな情報を集めます。日本でどのような商品が売れているかを調べるために、デパートで同じ売り場で何時間も粘っていました。
「僕がいかにも外国人という風体だったためか、店員に怪しまれたりしましたけど。逆にわざと怪しまれようと、商品を手に取る前に、あたりをキョロキョロ見回したり、警備員が近づいてきたら、わざと背中を向けてコソコソやったり。楽しんでいましたね」
この研究熱心さが、やがてカマルさんを成功へと導いたのでしょう。
(『ランチェスター戦略がイチからわかる本』(すばる舎)より引用)
★2000万円の借金を背負わされた!
●社長が夜逃げ!
じゅうたんの輸入販売の会社に勤めていたのね。社長はパキスタン人で、向こうからじゅうたんを取り寄せて売っていた。
ところがその社長、アフリカのナイジェリアからの詐欺に引っかかってしまった。
たぶん、株式とかの投資話じゃないかと思う。
いくら投資したかわからないけど、数千万か一億を超えていたかもしれない。マズイことにそのお金を取り戻すために、さらに50万円、100万円をつぎ込んじゃった。
それも知り合いから借金までしてつぎ込んでしまい、とうとうじゅうたん販売会社は潰れてしまったよ。社長は夜逃げして、最後はパキスタンで亡くなってしまったけどね。
困ったのは、その会社に最後まで残っていたボク。2000万円くらいの借金を押し付けられてしまったわけ。
にっちもさっちも行かなくなったね。
●パパに「逃げるな」と諭された
そんなピンチに陥っているとき、故郷の家族の元に電話したのね。
家族に心配かけたくないから、2000万円の借金を背負わされたことはナイショにするつもりだった。だから、できるだけ明るく振舞っていたんだけど、パパはごまかせなかったね。
「何か、おかしいよ。お前、なにかあったね?」って問い詰めてきた。
さすが、父親だね、遠く離れていても電話口の声だけで息子の異変を察知できるんだ。
ボクはとぼけて、
「いや、何もないよ」ととぼけてもダメ。
「いや、何かある。お母さんには黙っててあげるから、話してごらん」
けっきょく、最後は“白状“させられてしまった。
パパは、いろいろアドバイスしてくれた。
保証人になったとしても、書類がないから、裁判になっても勝てるし、支払いの義務もない、と。
「だけどね」とパパは言うんだ。
「そこでお前が逃げてしまっては、大きくなれないよ。たとえ毎月1万円でも5万円でも返さないと、お前はそのままで終わってしまう。日雇いの仕事をやってでも、お金は返しなさい。そうしないと、お前は、毎日日銭だけ稼いで過ごす一生で終わってしまうよ」
ボクはパパの言葉を信じて、逃げることだけは止めにしたんだ。
●救いの手が差し伸べられた
でも、どうにもらなない状況には変わりがない。
そんなあるとき、ある会社の社長さんと会食したのね。その会社は、仕事関係のお付き合いで、ある有名な住宅メーカーの関連会社。インタリアに関わる会社だったんだ。
その社長と知り合ったときは、まだ彼は社長じゃなかったんだけど、ずっとボクを可愛がってくれていた。
社長はボクの顔を見るなり、
「何かあったの? いつもと様子が違うよ」
と追求してくるんだ。
「いや、別に何も変わりませんよ」ととぼけても、人間って心のうちが表情に出るんだろうね。
「私はね、何万人もの社員の面倒を見るトップだからね。社員の困ったことは、すぐに見通せるんだ」
ボクも最後は観念して、正直に話したよ。そうしたらその社長、救いの手を差し伸べてくれたんだね。
「じゅうたんをどんどん、持ってきなさい」
その言葉に甘えて、じゅうたんを買ってもらった。そのとき社長は、
「もっと儲けを上乗せしなさいよ」とまで言ってくれたんだ。
涙が出るほど、その好意が嬉しかったね。
そうやって、ボクはピンチを乗り越え、その社長を始めとする周りの方々のおかげで、今日のボクがあるんだと思います。
★ヤクザと対決!!
ボクね、日本に来て間もない頃、ヤクザと交渉したことがあったよ。
ボクより1年か1年半ほど先に日本にきていたパキスタンの友だちがいた。その友だちが中古車を買おうとして50万円を支払ったんだけど、車が来ないわけ。そこでその友だちとボクの二人で相手のところに乗り込んだわけ。
詳しい場所は、差し障りがあるから言えないけど、湘南。駅でいうと、サザンオールスターズの曲が発車音として流される駅(笑)
。ただ、自動車で行ったので、本当に詳しい場所は覚えていないというか、本当に分からないんだけど。
で、相手の事務所でソファでそこのボスらしき人間と対峙したわけ。
話してても車を渡す気配もなく、お金を返す気もないらしい。
そこでボク、怒ったね。英語と日本語でまくし立てたんだ。
そうしたら、そのボス。
「この俺に面と向かってそこまで言った奴はいないよ」
そして後ろにいた人間に、
「おい、金、返してやれ」って。
無事、お金返してもらえたわけ。そしてその事務所を出てしばらくして、その友人が、
「私、怖かったよ。あの人たち、ヤ●ザだったね」って言うわけ。
ボク、日本にきて間もないころだったから、ヤ●ザって言葉、知らなかった。
友だちが説明してくれたよ。
「日本のマフィアだよ」って。ボクも怖くなって。もし、そうだと知っていたら、ああは出来なかったね。これからも出来ないと思うけど。